16年前に我が家に雑種の子犬がやってきた。
やってきたというより私が知り合いから譲り受けたのであるが・・
その頃、我が家の子供は五歳と三歳くらい。
子供と子犬とかみさんとのにぎやかな生活が始まった。
朝の散歩に始まり、夕方は子供たちとの戯れ、休日はカヌーに乗って川くだり、野山散策 ・・
いつの間にか子供たちは成人。 子犬は16才。 人間で言うと80才以上らしい。
とうとうついに老体としての各種疾病を抱え、薬の処方で何とか弱りながらも頑張っていたのだが、ここにきて足が立たなくなってしまった。
それでも何度も立ち上がろうと震えながらチャレンジする。何度も繰り返し、やっとの思いで立ち上がれば足を引きずりながらでも歩いていく。 ぐるぐるぐるぐる庭を回り、道路を歩き、倒れながらまた起き上がり、ぐるぐるぐるぐる歩く。
途中倒れてもしばらく休んだら、また歩き出す。 ゆっくりゆっくりぐるぐるぐるぐる ・・・
ゆっくり休めばいいのにと思うのだが、寝たきりだと不安になるのか、しばらくするとまた起き上がろうとチャレンジする。
まばたきもせず、まっすぐ見つめたまま ・・
その姿を見ながら思った。
これが最後まで生き切るということか。
本能という純粋な魂の状態で動物は生き切れる。 自らに与えられたその奇跡を何の疑いも無く純粋に使い切る。 その美しさといったら ・・
少なくとも私はこう生きていない。 なんと甘えと、言い訳と、惰性の渦の中で生きているのだろう。
なんと粗末に生きているのだろう。
犬一匹に敵わない。 そう思った。
すごい16才の犬は、 まだ暗闇の中を歩き続けている ・・・









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